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思いやりのこころ

 前回のお参りから説教台の位置を変えました。どうも、皆さんの顔が見えすぎるようです。どうか下を向いていて下さい(一同笑)。
お彼岸の法話、お参りはもう済みましたので、どうか楽にお聞き下さい。


…火事から学ぶ「謙虚さ」…

 先日の(近所であった)火事に、私は4時頃気づきました。町の上(かみ)方面、下(しも)方面を見ても何ともなっていませんでした。なんと火は真下から出ていたのです。「距離が離れているから平気だったろう」と思われるかも知れません。しかし、そうではなかったのです。空一面の火の粉が流れてきました。 当初は風向きの関係で下(しも)の方へ火の粉が落ちていました。それが時間と共にだんだんと、お寺の方へ落ちてくるようになります。
 墓地の隣接地…お隣さんの裏手…では、枯れた立木に燃え移りました。消火栓にホースをつないでその火を消したわけですが、そのホースの筒先を持っていたのが副住職でした。余談ですが(一同笑)。

 火元だけでなく離れた山側にも被害があったということで、消防団の方が駆けつけて下さいます。その後、火が出ないことを確認するまで警戒していてくれました。たまたま檀家さんがいましたが、誠に心強く思った次第です。

 ひとたび火が出ると消すことは困難なわけですが、こういうとき、人の力がいかに弱いか、つくづく感じます。家庭一般で使われているようなホースではどうしようもない。家に戻って何かを持ち出そうとすると、焼け死んでしまうかも知れない。色々なことがありますが、火事が一番怖い。

人は強がっていても自然にはかなわない
これを踏まえておくと、違う考え方ができ、慢心せずに謙虚な気持ちから出発できます。このことが大切なのです。


…暮らしにくい世の中。その1(ジコチュー増加)…

 都市部の救急車が出動した事例を、いくつかを紹介致します。
・酔っぱらいのイタズラだった。
・手の小指をぶつけたくらいの軽傷だった。
・「気分が悪い」との通報だったが行ってみるといなかった。しばらくすると戻ってきた。話を聞くと「待っていたけど来なかった。腹が空いてきたからコンビニに買い物へ行った」と言った。
・入院するための準備をして、タクシー代わりにしようとした。
もちろん、極端にひどいものでしょうが、自己中心の人が増えている証拠ではないでしょうか。


…暮らしにくい世の中。その2(物騒な世の中を反映?)…

 周りを気にしないと言えば、小学生が挨拶しなくなったようにも感じています。まるで昨今の物騒な状況を反映して、「知らない人には挨拶をするな」という指導があるのではないかと思ってしまうくらいに。

 将来がどうなってしまうか、本当に心配になります。


…暮らしにくい世の中。その3(全てをお金で計る世の中)…

 お金で価値観を計る世の中になりました。某テレビ番組では、素人が持っている骨董品を専門家に鑑定してもらい、その価値を金額に換算しています。放送開始以来、非常に人気で、長寿番組の域に入るほど長く放送されているのではないでしょうか。

 持っているだけで良いハズなのに、お金に換算したがる。100万円の価値があると思って調べてもらったら1万円だった。とたんに大切にしなくなる。1万円くらい思ったら100万円の値が付いた。急にそのものがよく見えてくる(一同笑)。それが人間なのですが…。「世間の値打ちがいくらであろうとも、自分が良いと思ったものは良い」と思えばいいのではないでしょうか。

 私が話す時はいつも暗い話しばかりです。次回の法話は副住職が担当ですから、楽しい話しになるでしょうが(一同笑)。


…暮らしにくい世の中。その4(世界の異常気象)…

 2月の新聞に、世界中の異常気象について掲載がありましたので、いくつか紹介致します。
・1月24日に名古屋でタンポポが咲いた
・1月23日に神戸で例年より23日も早く梅の花が咲いた
・モスクワで動物園の熊が一ヶ月しか冬眠しなかった
・東南アジアでは洪水が起こった
・イギリスでは春に咲くマツユキ草が年末に咲き、オタマジャクシが見られた
・フランス南部ではいつもはできない時期に海水浴がする人が見られた
・ロシアでは湖が凍結しなかった
地球温暖化をなんとかせねば、という気持ちにさせられます。でも、「どうすれば?」というのが正直なところではないでしょうか。例えば、「どうすれば二酸化炭素を減らすことができるか」。簡単には答が出ないこととは思いますが、一人一人が考えて行動していかなければならないのではないでしょうか。


…法華経「常不軽菩薩品」…

 先ほど拝読致しました「常不軽菩薩品」ですが、これは、まさに「常不軽菩薩」様について書かれたお経です。
 常不軽菩薩様は道行く一人一人に手を合わせられました。それは、一人一人の中にある仏種(ぶっしゅ)…仏様となる種…を見出されての行為なのです。すなわち、
自分の中にある仏種に気づき、それを大切にしていくことで、心やすらかに暮らすことができる
と法華経には書いてあるのです。
 みなさん、ぜひともこのことに気づいて生活されて頂きたいと思います。

 それでは、具体的にはどのようにすればよいかと申しますと、よくある例えとして「ろうそく」と「足のウラ」があります。

 ろうそくは自分を減らして周りを照らします。一人一人のために生きることが法華経に示されています。周りの人のために生きることが大切なのです。

 足のウラなしには歩けません。でも、足のウラは決して日の目を見ることはありません。文句も言わず、黙々と働いている。足のウラの気持ちを心がけることで、まわりと自分が幸せになれるのです。


…魔法の言葉…

 「ツキを呼ぶ『魔法の言葉』」を御紹介致します。それは、
ありがとう
感謝します
です。五日市剛さんという方が自著で紹介しているものです。それによると
困難の時こそ、ありがとうと言え
ということで、普通「何で自分(だけ)が――」と思うところですが、そこを敢えて「ありがとう」と言うそうです。それによって乗り越えられた時は「感謝します」という…すると、周りが自分を助けてくれるようになる。

 また、
悲観的にならず、「ツイている」と自分に言い聞かせると良い方に展開される
思いやりの心を持っていても実践しないと他人からは見えない。言葉にすることで気持ちを整える。


…日蓮聖人のお言葉…

 「蔵の財(たから)よりも身の財(たから)すぐれたり。身の財(たから)より心の財(たから)第一なり」(崇峻天皇御書)と日蓮聖人は仰っております。
 もちろん、「蔵の財」=金品も大事です。ですが、病気したらお金を使えません。「身の財」=健康であることはお金を持っていることより優れたことなのです。
 心が正しくないと暮らしにくいです。人は寄ってきません、助けてくれません。「心の財」=思いやりを持つことが第一なのです。

 では、「思いやり」とは具体的にどのようなことなのでしょうか。それは、
苦しんだり悲しんだりしている人がいたら、一緒に苦しんだり悲しんだりする
そういう境地です。
 周りを幸せにする人は、周りの人によって、もっともっと幸せにしてもらえるのです。そう考えると、思いやりとは、つきつめると自分のためになることなのです。


 これらことを、今日はお持ち帰り頂き、実践頂きたいと思います。そうすれば、9月=秋のお彼岸では、幸せな気持ちでお参り出来るのです。…もし、ムスッとされているようでしたら、思いやりの心が足りなかったんだ、と(一同笑)。

 最後に、ますますの御精進をお願いしまして、お彼岸の法話とさせて頂きます。長時間の聴聞、御苦労様でした。
平成19(2007)年春季彼岸会法話より

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