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『立正安国論』概略

 日蓮聖人が鎌倉で法華経を広める為 辻説法を行っていたころ、地震や暴風雨がつづいて飢饉や疫病がひろがったため、たくさんの人が生活に苦しんだ末に死んでしまいました。

 「国が乱れ 災害が起こり 人々が苦しむのは、法華経を信じないで まちがった教えが広まり信仰されているからだ」と考えられた日蓮聖人は、静岡県にある実相寺に三年間こもり、経典を読まれました。その結果、御自分の考えが正しいという確信を得、有名な『立正安国論』という論文をあらわされ、時の幕府にさし出して いさめられました。日蓮聖人39歳の時でした。


 以下、『立正安国論』の概略を述べます。
 (『立正安国論』は、客が質問し 主人が答える という形をとっています。)

(客)
 正嘉元(1257)年のころから文応元(1260)年にいたる4ヶ年の間に 大地震や台風などの天変地異が続き、飢饉が起こり 疫病が流行して 災難が天下に満ち、広く地上に はびこっています。そのために 牛や馬は いたるところで死んでおり、骸骨は路上に散乱して目もあてられず、すでに大半の人びとが死に絶えて、この悲惨な状態を悲しまない者は一人もおりません。
 そこでこのような状況から逃れようとして、様々な神仏への祈りを行っています。しかしながら、いたずらに心を砕くだけで何の効果もなく、飢饉や疫病は ますます激しくなるばかりです。この うち続く天変地異によって、どうしてこの世はこんなに早く衰え、仏法も王法もその威力を失い、すたれてしまったのでしょうか。これはいったいどのような理由によって生じたのでしょうか。また、どのような誤りが原因となっているのでしょうか。

(主人)
 少しく経文をひもといて研究してみますと、この災難の原因は 世の中のすべての人びとが正しい教えに背いて悪法邪法に帰依したため、国を護る諸天善神はこの国を捨てて天上に去り、正法を広める聖人も去って帰ってこないから、その隙に乗じて悪魔や悪鬼が押し寄せてきて、次々に災難が起こるのである、ということがわかりました。

(客)
 それはいったいどのお経に説かれているのでしょうか。

(主人)
 それを証明する経文は非常に多くあります。(…以下諸経の説明をします…)

 この後、客と主人との様々な問答が 更に続きます。そして、最後に主人が結論を述べます。

(主人)
 あなたは、一刻も早く邪(よこしま)な信仰を捨てて、ただちに唯一真実の教えである法華経に帰依しなさい。そうするならば、この世界は そのまま仏の国となります。仏の国は 決して衰えることはありません。十方の世界は そのまま浄土となります。浄土は 決して破壊されることはありません。国が衰えることなく 世界が破壊されなければ、わが身は安全であり、心は平和でありましよう。
 この言葉は真実であります。信じなければなりません。嵩(あがめ)なければなりません。

 以上が概略です。最後の結論部分が、一番大事なところですので、よく読んで下さい。
寺報『石蕗(つわぶき)』第7号より

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